特集!!|豊かな暮らしと地域の文化を形にする。左官工は最も身近なヒーローだ。(有)左菊 | POWER WORK[パワーワーク]

▲養生と下地処理のパテ埋めが終わった現場。
兄弟の息のあった動きで効率的に作業が進む。

ちょっと贅沢な塗り壁の家。こだわりのオーナーを満足させるのは、こだわりの技を持つ左官工。そんな職人の鈴木さんに、左官工の魅力を伺いました。

写真上
(有)左菊
5代目 代表取締役
鈴木 一史さん 46歳

写真下
鈴木 善也さん 42歳
兄であり社長である一史さんを支える

人生のすべてを駆使し、本質を見極め、壁をつくる。

 平滑に塗り仕上げられる一人前の技術を身に付けるまで5年といわれる左官工の道。さらにその技術の先にこそ左官工の本質がある。

 土壁、漆喰、珪藻土といった自然素材による豊かな暮らしを実現させる左菊。5代目である鈴木さんは、「豊かな暮らし、地域の歴史や文化を壁という形で表現するのが左官工。身近でありながら、住む人にとってローカルヒーローのような存在ですね」と新たな左官工のイメージを伝える。

「腕が良ければお金が稼げるっていう単純で甘いものじゃありません。もちろん技術が無ければ始まらない。要はテクニック以外にも大切なことがたくさんあるんです」

 自然素材を使った壁。特に土壁は建材として開発された材料とは違い、高度な技術力が求められる。その技術を活かすもの。それは人生で育んできた人としての『軸』という。

「その道のプロとして必要な知識。あらゆるケースに対応できる経験。施主さんの要望を形にする責任。これらはほんの一例。結局は、『左官工として働く理由がどこにあるのか』ということ。私がそれに気づいたのは10年くらい経って初めて賞をもらったとき。それまで仕事には自信しかなかったのですが、賞を取って施主さんに喜んでもらうことで、もっと成長しなければいけない怖さを感じたんです。そこで私の中の『軸』は、施主さんにとって豊かな暮らしをつくることでした。そのためには職人自体も豊かでなくてはいけません。豊富な知識や経験だけでなく、これまでの人生で得たすべてを駆使する。施主さんの希望の本質を見極め提案し実現することに、10年経って新たに左官の神髄が見えました」

 豊かな暮らし。それは家の数だけある。住む人にとって左官工は最も頼れる存在であるべき職人でなくてはならない。

「ライフスタイルの違い。家が建つ場所の環境。地域の文化や歴史。ある人にとっては、またある地域では最高の壁であっても、他の人、また他の土地では別のものが正解になります。それらをすべて含め、住む人にとって唯一の答えを壁という形で表現する。簡単ではありません。でもそれが左官の面白さ。日本一の技術を目指すというより、身近なローカルヒーローであることにヤリガイを感じます」


  • 材料と水を混ぜて練る。水の量は既定の量を計量するが、少量の材料の仕込みや練った様子によっては感覚で微調整する

  • 1ミリ幅の養生でも、漆喰と珪藻土ではコンマ数ミリの違いがある。スケールは使わず感覚が頼り

  • 職人のコテ使いによって生まれるデザイン。下地を整えるパテ埋め(下塗り)の後、仕上げの上塗りをする (写真提供/左菊)

  • 照明を当てると分かりやすい表面の質感

  • 塗り壁独特の雰囲気が空間のデザイン性を高める

今号の取材協力は……

(有)左菊
TEL.046-882-6460
神奈川県三浦市三崎1-10-6
◆設立 1961年 ◆従業員数 3人
https://www.sakiku.com/

神奈川県を中心にこだわりの家を手掛ける同社。土壁、漆喰、珪藻土など自然素材で塗り仕上げた壁に力を入れ、またその魅力を広く伝える多数の企画を開催している。

POWER WORK 259号 2022.3.14発行
Photos/ Yuzo Matsutani, Composition/ ad-giga

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