特集!!|パワーワーク インタビュー「新たに生まれた家の役割。 家を育てる内装工へ。」(株)センスプロジェクト 齋藤 浩光氏 | POWER WORK[パワーワーク]

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新たに生まれた家の役割。家を育てる内装工へ。

新築物件の現場は多くの専門職人による分業制が一般的。今回は、既存物件のリフォーム・リノベーション工事を行うセンスプロジェクト代表の齋藤氏からリフォーム業界に求められる内装工や多能工の未来性についてお話を伺いました。

(株)センスプロジェクト 代表取締役 齋藤 浩光

(株)センスプロジェクト 代表取締役 齋藤 浩光

レーシングチームのマネジメントや車業界用のシステム開発を経験。しかし大勢の人々のためになる仕事を求めて一旦すべてをゼロに。そこで出会ったのが賃貸物件の原状回復工事。半年で一通りの仕事を覚えた後、営業として業界を学び、2004年に同社を設立。

家を“変える”と“戻す”の違い。 いつまでも暮らせる家づくり。

御社の考えるリフォームについて教えて下さい。

齋藤 浩光氏(以下、齋藤) リフォームとは“変える改修”と“戻す修繕”という2つの意味と役割が存在します。変える目的は、設備等の性能向上やおしゃれで住みやすい空間に変えたい価値向上を満たすこと。一方戻す目的は、暮らす中での劣化や不具合を必要最低限に直すこと。この2つの目的に明確な線引きはありませんが、施すための考え方とアプローチは大きく異なります。古くなった建物をリフォームすることは、多くの知識と幅広いスキルが必要です。これからの建築リフォーム時代は、マルチな職方ニーズが求められると考えられます。
 新築はゼロから作業を始め、図面通りにつくることが第一。一方、リフォームは建物の特徴や経年変化を理解し、活かしながらつくり直すことが第一。日当たり、雨風、地震など自然の影響と経年まで考え、家の何をどこまでリフォームするのか? 私たちは住む人の想いや建物を考えた上で、家主や大家、不動産管理会社から信頼を集め、業績を伸ばしてきました。

リノベーション物件も急速に増えていますね。

齋藤 まずは※SDGsの影響は大きいと感じています。“つくる責任とつかう責任”というサスティナブル(持続可能)な世界を目指すことは、リノベーションとリフォームにより住み続けられる家づくりを目指すべき。それがこれからの建設業界全体の課題と役割であると感じております。
 リノベーションとリフォームによって持続的な住まいと暮らしが図れる理由として、2000年以降の新耐震基準の性能評価を細かく段階的に評価したことが挙げられます。この活動と改善策などのデータが蓄積され、旧耐震の物件の減少が明らかになりました。そこで従来の建て替え (スクラップ&ビルド)から既存住宅の再生(リノベーション)と修繕(リフォーム)が注目を集めると予想されるのです。

※SDGs(エス・ディー・ジーズ):Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。2015年9月の国連サミットで採択され、2030年までの15年間で達成するために掲げた目標

新型コロナで変わる住宅の役割。リノベーション市場は拡大する。

コロナショックの影響によって建設業界はどのように変わるのですか?

齋藤 今までとは全く異なった新たな役割が、住まいに求められると思います。
 緊急事態宣言以降、リモートワークが進められ、働き方や暮らし方そのものを見直す企業と個人が増えました。それまでの家づくりは、通勤圏内、都心暮らし、新築物件購入を中心とした、家族の夢や絆が主なコンセプトでした。しかしこれからの時代は、通勤圏外の自由な暮らし方、暮らしながら働ける空間づくり、中古物件を購入して好きな間取りにリノベーション、という新たな価値観が生まれつつあります。
 昨今、「中古マンションリノベ」という言葉が不動産業界においてブームです。今後は更に『リノベーション』と言うワードが飛び交う時代が到来します。ただし、本来あるべき『住宅リノベーション』と言う概念は、中古マンション再販用の言葉ではなく、戸建、マンション、分譲や賃貸のアパート、その他建物自体の性能を再生させること。マンション管理組合が計画する大中規模修繕などと同様に、すべての住宅に修繕計画が必要なのです。家主が自ら保有する住宅の経年状態を把握し、事前計画が図られていれば、結果としてコストパフォーマンスが良く、建物にとって持続可能な住環境を維持できることになるはずなのです。
 住宅を立て替えることなくリノベーションとリフォーム行うためには、最良な提案や施工を担当してくれる伴走者(リフォーム営業と職人)の存在が重要です。今後、これらの提案や施工が可能なリノベ&リフォーム人材の教育と増員が急務で求められています。

現場で見てきたノウハウの蓄積。そこに未来のチャンスがある。

リノベーション&リフォームには、どんな技術と知識を持つ人材が求められるのですか?

齋藤 新築の現場では、専門職人が連携しながら役割分担をして進めています。現場では、なんとなく隣の仕事や役割などを知識として理解しているのではないでしょうか。その“なんとなく”を自分でやってみると何かが変わるはずです。
 住宅を“変える改修”と“戻す修繕”の技術を本気で学び、トライし、実戦することができたら、それだけで仕事の幅は広がります。それはこれからの時代に重宝される多能工として、必然と求められる人材になることは間違いありません。是非、多くの職人仲間が私たちと同様に多能工を目指してもらいたい。そして、将来リフォームを知るプロフェッショナル集団が全国に形成されると嬉しいと願っております。

今回の取材協力は……

(株)センスプロジェクト
☎045-948-6866
神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎南4-1-19
設立2004年
http://senseproject.jp/

賃貸住宅のリフォーム・リノベーション工事を請け負う同社。大手の不動産管理会社や地元である横浜の管理会社、物件オーナーを支える黒子として、施工だけでなく資産維持のプランニングまで手掛ける。

取材した場所は……

一般財団法人KILTA 工房:KILTA横浜
https://kilta.jp/yokohama/

齋藤氏が理事を務め、センスプロジェクトの倉庫内に用意されたDIY工房。暮らしをつくる人になるをビジョンに、木工作業や溶接作業ができるプロツールを多数備える。問い合わせはKILTAのWEBサイトをご覧下さい。

POWER WORK 227号 2020.11.23発行
撮影●清水真帆路 構成・インタビュー●アドギガ

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