特集!!|豪快に、時には繊細に。はつりの仕事(株)クラヤ工業 | POWER WORK[パワーワーク]

はつり工事の魅力はコンクリートを砕く豪快さ?ミリ単位で調整する繊細さ?まだ未経験の読者に向けて、はつり工事の社長にその魅力を聞いてきました。

一生懸命のカッコ良さ。夢中になれたはつり工。

 コンクリート構造物を削るはつり工。一度削ったら元に戻すことはできない作業だが、クラヤ工業社長の土倉さんは新人にこそ経験を積ませる。

「材料運びばかりやっていても成長しませんよ。とにかくコンクリートをはつらないと上手にならない。『下っ端なんで』って遠慮しないで『やりたい!』って気持ちをウチは尊重します。失敗は先輩が面倒を見るもの。その先輩だって、新人に作業を押し付けるんじゃ意味がない。育てたいからやらせる先輩と、成長したいからやってみる後輩。そんなお互いがいて、現場も仕事も楽しくなる。だからウチは長く続く人が多いんじゃないかな」

◀︎(株)クラヤ工業 代表取締役 土倉 拓郎さん(40歳)

調理師学校を卒業後、イタリアンのお店で修行。短期留学したイタリアでは、新人にも調理させる教え方に影響を受ける。その後、友だちが大勢働いていたはつりの仕事が楽しそうだと感じ、資金稼ぎのために2年のつもりではつり工になる。いつの間にかのめり込み、2010年に6人の仲間とクラヤ工業を起ち上げる。

 もともと土倉さんは、はつり工を2年ほど経験した後は別の道で働くことを考えていたという。しかし気が付くと6年経ち、独立起業していた。

「若い頃、一生懸命はカッコ悪いと思っていた時期があったんですよ。それがね、現場では男たちが汗水垂らして一生懸命になってる。カッコ良いんですよ。それで仕事にハマったんだけれど、まだ当時は生意気ばっかり。既に一人前になっていた地元の友だちや後輩に仕事を教わるのに、現場ではみんなが先輩ってことをまだ分かっていなかった。きっかけは仕事で明らかな失敗をしたときのこと。何とかしてくれた職長は地元の後輩。後輩に助けられた衝撃で、仕事に対する考えは完全に変わったんです。はつり工の仕事とは、夢中になれるだけじゃなく、社会を教えてもらって人として成長できた仕事。だからこれからウチに入る人にも夢中になって成長できるよう、すぐにピックを持たせるんですよ」

ミリ単位でコンクリートを削る 改修現場のはつり作業

タイル張りだった室内の改修工事現場。タイルを取り外すためにコンクリートまで砕く必要があるのだが、建物の構造自体に傷をつけない繊細さが必要。電動ピックを用い、先端工具(チゼル。またはタガネ)を用途に合わせて使用。墨出し工が引いた線に合わせてミリ単位のはつり作業を行う。

218号画像
  • ▲削る厚みによってそれぞれに違う先端工具。先端が尖っているものは、破砕性に優れた形状。
  • ▲削る厚みによってそれぞれに違う先端工具。平ノミは、薄く剥がすようなはつりに向いている
  • ▲コンクリートの表面を数ミリだけ削った様子。この上に左官やタイル工などの仕上げ職人が下地剤を施し、表面を仕上げる
  • ▲はつる壁面の上部と下部が同じ幅だけ削れているか、桟木をあてて確認。豪快なイメージのあるはつりだが、実は非常に繊細な作業

▲削る厚みによってそれぞれに違う先端工具。先端が尖っているものは、破砕性に優れた形状。

▲削る厚みによってそれぞれに違う先端工具。平ノミは、薄く剥がすようなはつりに向いている

▲コンクリートの表面を数ミリだけ削った様子。この上に左官やタイル工などの仕上げ職人が下地剤を施し、表面を仕上げる

▲はつる壁面の上部と下部が同じ幅だけ削れているか、桟木をあてて確認。豪快なイメージのあるはつりだが、実は非常に繊細な作業

はつり工

 コンクリート製の壁などを壊したり、規定の形に添って整えるために削る職人。新たな開口部を設ける改修工事や、型枠を取り外した後の調整など、コンクリートを使用した新築や改修の現場で不可欠な職種。杭基礎など土木工事では、はつりを前提とした工法も多数存在する。  厚みのある壁や土間の撤去などの現場では重量が数十kgのブレーカーを使う一方、ミリ単位で削る場合はピックや電動ハンマーと呼ばれる打撃に特化した道具を使用。はつり後の工作面や作業効率を考えて先端工具を付け替える。  建物自体を取り壊す解体工事とは区別される。作業内容が似ているために解体工事を兼務する会社も多いが、その場合ははつり工事とは呼ばない。

今回の取材協力は……

(株)クラヤ工業
☎03-6657-2394
東京都墨田区墨田3-41-4
2010年創業 従業員数約50人
https://www.kuraya-ind.co.jp

新築や改修工事でのはつり工事や基礎杭における杭頭処理のほか、解体工事を手掛ける同社。6人で創業してから10年で職人は約50人。現場に立てなくなっても働き続けられる体制を模索し、かつてバリバリ働いていた職人の夢の応援を兼ねて居酒屋開業にも支援した。今年の5月には新社屋での営業がスタート。

POWER WORK 218号 2020.7.6発行
撮影●桑原克典 構成・取材・文●アドギガ

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